伝記ノンフィクション『奇跡のプリマ・ドンナ オペラ歌手・三浦環の「声」を求めて』大石みちこ著 KADOKAWAより刊行
著者の大石みちこさんは脚本家として活躍しており、本書が初のノンフィクション作品となります。
大石さんは、新たに発見された本人直筆の手紙や、幼少期〜晩年の写真が収められたアルバム、演奏会プログラム、志賀直哉、村松梢風、三島由紀夫などの作家からの批評、同時期にロンドンに滞在した留学生の日記などの膨大な資料に丹念に当たり、生存している生前の三浦環と面識のある人物のもとを訪ね歩くなど、徹底した取材をもとに三浦環の実像に迫りました。
◆未公開・未発表の母との手紙とアルバムから新たな三浦環像を描き出す
太平洋戦争前の日本で盛んに催された博覧会の賑わいや、結婚よりも「歌」を選んだ環に対する世間からの厳しい視線、ほどなく再婚することになった環への下世話な好奇心なども手紙からは読み取れます。
また、疎開先の山中湖村に遺された3冊のアルバムから、写真もいくつか新たな史料として本書に収められています。
戦争が激化し、東京・麹町から山中湖村に疎開した環母子。オペラはおろか、西洋の歌を聴いたこともない村人の中には、湖畔に向かって歌う環の歌声を気味悪がる者も多かったといいます。物がない質素な疎開暮らしの中で、87歳まで生きた母、登波の介護を一身に負った環。母娘は強い絆で結ばれ、今もいっしょに山中湖村の墓地で眠っています。
◆プッチーニが讃えた唯一無二の《蝶々さん》~国内外で華々しい活躍をした三浦環
環の「声」は海外のオペラカンパニーで認められ、ドイツ・ロンドン・イギリス・アメリカと、大戦下の欧米で著名な歌手と共にロイヤル・アルバート・ホールやホワイトハウスなどの舞台に立ち、ジャポニズムを越えて、日本文化のアイデンティティの確立に貢献しました。
日本でも、実業家・渋沢栄一、歌手・藤原義江、李香蘭(山口淑子)、画家・藤島武二、作曲家・滝廉太郎など財界人・芸術家との交流があり、東京音楽学校、帝国劇場と大舞台に立ち続けました。大正11年には、レコード録音し、日本全国を巡演し、一方で後輩たちを育てることにも尽力しました。
明治~昭和期に「声」一つでプリマ・ドンナの階段を駆け上がった環は、綺羅星のごとき存在でした。
代表作《歌劇 マダム・バタフライ》の舞台となった、長崎県のグラバー園には三浦環とプッチーニの像が並んでいます。
◆人間・三浦環を真正面から描いた伝記ノンフィクション
日本の芸術史に新たな光を当てるノンフィクションとなっています。
【目次】
第一章 誕生 歌う喜び
第二章 東京音楽学校
第三章 《歌劇 オルフォイス》日本初のオペラ公演
第四章 スキャンダル
第五章 戦時下の海外デビュー
第六章 プリマ・ドンナという運命
第七章 訃報
第八章 わたしをお愛しください
終章 環の冬の旅
■タイトル:『奇跡のプリマ・ドンナ オペラ歌手・三浦環の「声」を求めて』
■著者:大石みちこ
■判型:四六変形判296ページ
■価格:2,530円(本体2,300円+税)
■発売日:2022年10月4日
■ISBN:9784046056221
大石みちこ
東京都出身。脚本家。東京藝術大学大学院映像研究科客員教授。
東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻修了後、2008年映画「東南角部屋二階の女」(池田千尋監督)で脚本家デビュー。主な作品に映画「ゲゲゲの女房」「楽隊のうさぎ」「ドライブイン蒲生」、アニメーション「ヒバクシャからの手紙 貴女へ」、NHKスペシャル「ドラマ 星影のワルツ」がある。
アップルシード・エージェンシー契約作家。
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