原作を尊重したアニメーションと、映像美へのこだわり「ルックバック」上映&トークレポート|第11回新千歳空港国際アニメーション映画祭
本作はアヌシー国際アニメーション映画祭を皮切りに、ロサンゼルスやソウルをはじめ世界各地で上映されており、中国では驚異の5000館超で公開されました。「一般の方々やアニメーション関係者から非常に好評なリアクションをいただいている」と喜びを語りました。
漫画をアニメーションに落とし込んでいくこと
例えば、京本の目の表現について「涙袋なのか、下まつ毛なのか、くまなのか」といった細部を明確化するなど、制作チームが統一して描けるように整理したプロセスについて解説。
また、絵コンテ等にいつまでも決定稿が出てきていないことについて田中に指摘されると、「優柔不断さのせいです」と笑いつつ、「描き直したいときには描き直せるように」決めないことにしていたと明かします。
60分弱の本作でも、絵コンテ完成からアニメーターと制作を開始し完成するまで1年ほど描き続けることになるアニメーション制作の現場。「作品への理解が進むことで絵柄はどうしても変わってきてしまう。デザインにも自由度を持たせた方が良い表現を追求することで結果よいものになると思っています」と制作の裏側についても振り返りました。
また漫画と映像の違いとして、漫画の表現として自由にコマ割りができること、映像では必ず横長のサイズで観せる必要があること、空間としての人物の立ち位置、動きでより加えることによってドラマが魅力的に見えるかなどを挙げ、漫画表現をアニメーションにする上で、漫画の印象をそのまま踏襲すること意識したと強調しました。
音があることが、漫画との大きな違い
また音楽については、「絵コンテ(アニメ映画の設計図)の段階でビデオコンテを作って、自分でセリフや欲しいイメージの音楽を入れ込んで見せた」と音楽を担当したharuka nakamura氏との制作プロセスを回想し、「何を欲しているのか掴んでもらったあとは、自由に作ってもらった」と押山監督。
映り込み、光の表現、絵画のように描いていきたい
アニメーションで映り込みを描くということは、さらに別で映り込みだけの絵を用意することになるのだそう。「アニメーターから上がってきたレイアウトに対して(映り込みの指示等を足して)どんどん大変にしていった。申し訳ない」と苦笑いしつつ「映り込みが好きなんです」とそのこだわりについてさらに話は深まっていきます。
押山監督は、アニメーションの現場にある課題として、背景美術は効率化を求められるあまり、絵として描いているという意識が薄れてしまいがちであるということを指摘し「出来るだけ一枚絵として美しい絵にしてほしい」と注文をしていたと明かします。
また押山監督が印象派の作品が好きであったのと、藤本タツキさんが学生時代に油絵学科だったことから、水彩的な背景ではなく、厚塗りでしっかり色が乗っている絵画的な表現になっていったと振り返りました。
これに対して田中は、「映り込みや光の表現というのは、絵画の歴史としても繰り返されてきたこと。光をどうやってアニメーションに取り込むかっていうことに熱を入れて取り組んでいると感じました」と述べ、トークを締めくくりました。
「ルックバック」はPrime Videoでの世界配信中のほか、全米での大ヒットを受けて、全米公開版で本編と同時に上映されている「インタビュー付き特別版」が上映中です。アニメ化オファーがきた時の感想や、「ルックバック」をアニメーション表現する際のアイデア、さらに本作ならではの「原動画」という特殊な制作過程について押山清高監督が劇場アニメ「ルックバック」の見どころを語ります。
詳細はルックバック公式サイトをご覧ください。
新千歳空港国際アニメーション映画祭
第11回目の開催となる今年は、2024年11月1日(金)~11月5日(火)の5日間で、国内外の話題作など招待作品の上映はもちろん、多様な未来につながるアニメーションの体験を提供する様々なプログラムを展開します。
今年もゲストと観客が密接に交流できる独自の場を活かし、アニメーションの意義を拡張するような新しい価値を生み出す「遊び場」として、エネルギーを持ち帰ることができる文化交流拠点の創造を目指します。
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